黒字なのにお金が残らない
――利益とお金がズレる4つの置き場所

こんなことで困っていませんか?
・決算は黒字で税金も払ったのに、通帳が増えていない
・売上が伸びた年のほうが、かえって資金が苦しい
・利益がどこに消えたのか、試算表を見ても分からない

当事務所は、月次の経営報告で「利益がどこに置き換わったか」を1枚でお示ししています。この記事は要点だけ。3分で読めます。

結論は3つ

数字で1つだけ――黒字1,000万円で、残った現金がゼロになる

例(1年間、単位:千円)

項目金額
税引後の利益1,000
+ 減価償却費(お金が出ていかない費用)+300
− 在庫の増加△600
− 売掛金の増加△400
+ 買掛金の増加+200
− 借入金の返済(元金)△500
手元に残った現金0

黒字100万円でも、残った現金はゼロ。「儲かっていないのでは」ではなく、儲けが在庫と売掛金と借入返済に置き換わっただけです。

4つの置き場所

  1. 在庫――仕入れても売れるまで費用になりません。お金の姿のまま棚に積まれています
  2. 売掛金――売上は計上されますが、入金は翌月・翌々月。伸びている会社ほど残高が膨らみます
  3. 借入金の元金返済――費用になりません。税金を払った後の利益から返します
  4. 税金・社会保険・賞与――毎月ではなく、決算後や年2回にまとまって出ていきます

売上が伸びると、先にお金が出ていく

月商1,000万円(売掛2か月・在庫1か月・買掛1か月、原価率70%)の会社が、月商1,500万円になった場合。

月商1,000万円月商1,500万円
売掛金2,000万円3,000万円
在庫700万円1,050万円
買掛金△700万円△1,050万円
必要な運転資金2,000万円3,000万円

売上が5割増えると、約1,000万円が先に出ていきます。これが「増収なのに資金が苦しい」の正体で、本来は借入で用意しておくべきお金です。

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よくある3つの誤解

  1. 「利益が出ていないから資金が足りない」——逆です。赤字の会社より、売上が伸びている黒字の会社のほうが資金は苦しくなります。伸びた分だけ在庫と売掛金にお金が移るためです
  2. 「節税すれば資金が残る」——税金を100万円減らすために300万円使えば、手元は200万円減ります。税率が30%なら、1円の節税に3円強を使っている計算です。お金を残したいのか税金を減らしたいのかは、別の話です
  3. 「減価償却費が大きいから資金は安心」——減価償却費が大きいということは、過去に大きな投資をしたということです。多くの場合その借入の返済が残っており、減価償却費はその返済に消えています

毎月見るのは3つの日数だけ

在庫・売掛金・買掛金の残高を見ても、多いか少ないか判断できません。何日分あるかに直すと、比べられるようになります。

指標計算意味
売上債権回転日数売掛金 ÷ 月商 × 30売ってから入金までの日数
棚卸資産回転日数在庫 ÷ 月商原価 × 30仕入れてから売れるまでの日数
仕入債務回転日数買掛金 ÷ 月商原価 × 30仕入れてから支払うまでの日数

例:売掛60日 + 在庫30日 − 買掛30日 = 60日。
月商1,000万円なら、常に2,000万円が寝ている状態です。これが「必要な運転資金」の正体で、売上が伸びればこの金額も比例して増えます。

この3つの日数を月次報告に並べるだけで、どれが悪化したのかが一目で分かります。在庫日数だけが伸びているなら仕入れすぎ、売掛日数が伸びているなら回収の遅れ——打ち手が変わります。

打ち手は「置き場所」ごとに違う

置き場所打ち手効き方
在庫発注点の見直し、滞留在庫の処分、
仕入ロットの縮小
すぐ効く。ただし欠品との綱引きになります
売掛金請求の締日を早める、前受け・着手金、
回収サイトの交渉
交渉が要るが、一度直れば毎月効きます
借入金の返済返済期間の延長、長期への借換え、
短期の運転資金枠の設定
最も速い。増加運転資金は本来、借入で持つものです
税金・社会保険・賞与毎月、概算額を別口座に積む資金繰りが平らになります

順番としては、まず借入の組み方を見直すのが現実的です。在庫や売掛金の改善は相手のある話で時間がかかりますが、増加運転資金を短期の借入枠でまかなうのは、今月からでもできます。

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執筆・監修: 酒瀬川 泰裕
公認会計士・税理士(公認会計士登録番号32245/税理士登録番号153477)

本記事は公開日時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。個別の税務判断は事業者ごとの事情により異なりますので、具体的な適用にあたっては個別にご相談ください。

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